司法試験合格には2つのルートがある!?難易度や勉強法も紹介
司法試験合格には2つのルートがある!?難易度や勉強法も紹介
国家試験の中でも最難関といわれるものが司法試験です。かつては法科大学院を卒業後、受験資格を得たのち、何度も試験にチャレンジをする方が多い試験として知られていました。
しかし、現在は司法試験を取り巻く状況が変化しており、以前よりも若干ハードルが低くなっている状況です。そこで今回は司法試験の受験を検討している方のために、受験資格を得るための2つのルートや難易度、勉強法などを紹介します。
そもそも司法試験とは
司法試験の概要や日程、受験費用、合格後のキャリアを紹介します。
司法試験の概要
司法試験とは、法曹三者と呼ばれる「裁判官」「検察官」「弁護士」の資格を得るために必要な学力や知識、応用力を判定する国家試験です。
参考:法務省:令和3年司法試験に関するQ&A(司法試験の概要)
司法試験の実施日程と受験費用
司法試験は毎年5月中旬に4日間の日程で実施されます。例えば、令和4年度の司法試験は、以下の日程で実施されました。
令和4年5月11日(水) |
論文式試験 |
選択科目(3時間)
公法系科目第1問(2時間) 公法系科目第2問(2時間) |
令和4年5月12日(木) | 民事系科目第1問(2時間)
民事系科目第2問(2時間) 民事系科目第3問(2時間)
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令和4年5月14日(土)
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刑事系科目第1問(2時間)
刑事系科目第2問(2時間) |
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令和4年5月15日(日) | 短答式試験
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憲法(50分)
民法(75分) 刑法(50分) |
試験会場は札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡の7都市で、受験手数料として28,000円が必要です。
法曹三者へのルートと将来性
司法試験に合格した方は、司法修習生として1年間の司法修習を受講しなくてはいけません。そして、研修の最後に実施される司法修習生考試(別名「二回試験」)に合格することで、晴れて判事補、検事、または弁護士になれる資格が取得できます。
先が読めない世の中になったことで、法的トラブルが急増し法曹三者の需要は高く、さまざまなシーンでの活躍が期待される状況です。しかしその一方で、司法試験に合格すれば必ずしも高収入が得られるわけではない点に注意が必要です。
就職や転職の際には、試験の点数や司法修習の点数などが重視されるため、可能な限り良い点数で早めに司法試験に合格することが求められます。また、司法制度改革によって、法曹三者を目指す方が増えたことにより、仕事を取ることが難しくなっている状況です。そのため、司法試験合格後もスキルアップや別資格の取得、専門的知識の習得など、常に他者との差別化を図る努力が必要になるでしょう。
司法試験の受験資格を得る2つのルート
現在は、司法試験の受験資格を得るために、法科大学院ルートと司法試験予備試験ルート(以後、予備試験ルート)の2つの道が用意されています。それぞれのルートについて解説します。
法科大学院ルート
法科大学院ルートとは、法科大学院(ロースクール)へ入学し、課程を修了することで司法試験の受験資格が得られるルートです。
法科大学院ルートは2年間の既修者コースと3年間の未修者コースの2種類に分類され、いずれも大卒が受験資格となっています。(一部の法科大学院では大学3年からの編入を認めるケースもある)法科大学院によって入学の難易度や卒業生の司法試験合格率は異なり、東大や京大、一橋、慶応など、人気校の難易度は非常に高いです。
既修者コースは法律に関する一定の知識を持つ方のためのコースで、例年8月中旬~11月中旬にかけて各校で試験が実施されます。試験科目は各校バラバラなため、受験を希望する法科大学院の試験対策が個別に必要です。
一方、未修者コースは法律の知識を持たない方のためのコースとなっており、受験内容は小論文や面接などが中心で、法律に関する試験は実施されません。
予備試験ルート
予備試験ルートとは、司法試験法第5条 第1項に規定された司法試験予備試験に合格することで、司法試験の受験資格が取得できるルートです。予備試験は法科大学院の課程修了者と同等の学力や知識、応用力の有無を判別するために実施されます。
予備試験には特定の受験資格がありません。そのため、経済的な理由などで、法科大学院へ通えない方の救済ルートとしても活用されています。もちろん、法科大学院の学生も受験できますので、在学中に予備試験に合格して司法試験の受験資格を得る方もいるようです。
なお、司法試験予備試験の試験科目と受験日程は、以下のようになっています。
<試験科目>
・短答式試験、
└法律基本科目(憲法、行政法、民法、商法、民事訴訟法、刑法および刑事訴訟法)
└一般教養科目(人文科学、社会科学、自然科学、英語)
・論文式試験
└法律基本科目(憲法、行政法、民法、商法、民事訴訟法、刑法および刑事訴訟法)
└一般教養科目 (2022年実施の予備試験より廃止。一方で「選択科目」が導入。司法試験法第5条第3項)
└法律実務基礎科目(民事師匠実務・刑事訴訟実務・法曹理論)
・口述試験
└法律実務基礎科目(民事・刑事)
<受験日程>
短答式試験は例年5月中旬の日曜日、論文式試験は7月初旬の土日、口述試験は10月下旬の土日に実施。
参考:法務省/令和3年司法試験予備試験に関するQ&A【司法試験予備試験の概要】
司法試験の受験資格の有効期限
司法試験の受験資格は両ルートともに5年間ですが、起算日が以下のように異なる点に注意しましょう。
・法科大学院ルート:修了日以後の最初の4月1日から5年間
・予備試験ルート:合格日以後の最初の4月1日から5年間
参考:法務省/受験資格図解資料
司法試験の内容
司法試験では、短答式試験と論文式試験が同時期に行われます。それぞれの試験内容を紹介します。
短答式試験
短答式試験とは、法曹三者を目指す方に必要な法的知識と推論能力を判別するための試験です。試験問題は憲法(50点満点)、民法(75点満点)、刑法(50点満点)の3科目から出題されます。試験時間は憲法50分、民法75分、刑法50分です。
論文式試験
論文式試験は、法曹三者を目指す方に必要な学力や知識だけでなく、法的な分析、構成、論述能力の有無を判別するための試験です。試験問題は公法系から2科目(憲法、行政法)、民事系から3科目(民法、商法、民事訴訟法)、刑事系から2科目(刑法、刑事訴訟法)および選択科目が1科目(倒産法・租税法・経済法・知的財産法・労働法・環境法・国際関係法(公法系)・国際関係法(私法系)から1科目)の合計8科目から出題されます。
試験時間は選択科目が3時間、他の7科目が2時間、1科目100点満点で合計800点満点です。
参考:法務省/司法試験の仕組み
司法試験の難易度
司法試験の合格率は、ルートやコースによって変化する点が特徴です。それぞれの難易度がどの程度なのか紹介します。
司法試験の合格率
近年の司法試験の合格率は、30%~40%程度です。なお、令和2年、3年の合格率は以下の結果となっています。
・令和2年:受験者数3,703人 、合格者数1,450人→合格率:約39%
・令和3年:受験者数3,424人 、合格者数1,421人→合格率:約42%
法科大学院ルートの合格率は、既修者コースで30%程度、未修者コースで10%程度です。
未修者コースで合格することは、非常に険しい道といえるでしょう。ただし、予備試験合格者の司法試験合格率は90%程度と非常に高い点が特徴です。したがって、法科大学院ではなく法律の専門学校などに通って、予備試験を受験するのも一つの方法といえるでしょう。
短答式試験の合格ライン
短答式試験の合格率は、例年65~75%程度で、合格ライン到達は7割程度の正答率が必要です。
ちなみに、令和2年、3年は以下のような結果でした。
・令和2年:受験者数3,664人、合格者数2,793人→合格率約76%
合格平均点118.1(175点満点)→約67%
・令和3年:受験者数3,392人、合格者数2,672人→合格率約78%
合格平均点126.4(175点満点)→約72%
論文式試験の合格ライン
論文式試験の合格率は例年短答式試験を合格した受験者の40~50%程度で、合格ラインが45~50%程度です。
なお、令和2年、3年は以下のような結果でした。
・令和2年:受験資格者数2,793人、合格者数1,450人→合格率約52%
合格平均点393.5点(800点満点)→約49%
・令和3年:受験資格者数2,672人、合格者数1,421人→合格率約53%
合格平均点380.77点(800点満点)→約48%
司法試験の勉強方法
ハードルの高い司法試験に合格するためには、かなりの勉強時間が必要です。勉強時間の相場と、勉強法を紹介します。
司法試験合格に必要な勉強時間
司法試験合格に必要な勉強時間は3,000~8,000時間程度が相場といわれており、必要な時間の振り幅が非常に大きい点が特徴です。
法科大学院ルートの既修者コースで司法試験に最短で合格する場合、大学4年、法科大学院2年の期間が必要になります。未修者コースの場合は、大学4年、法科大学院3年ということで、最低でも7年の期間が必要です。
一方、予備試験合格に必要な勉強時間は1,000~5,000時間程度と、こちらもかなりの振り幅がありますが、法科大学院ルートに比べると短くなっています。中には3~5年間の勉強で予備試験に合格する方もいるようです。
このようにルートやコースによって、司法試験の勉強時間は大きく異なります。また、法律の知識がない方や社会人で時間がない方は、さらに多くの勉強時間が必要になるでしょう。
司法試験勉強のコツ
司法試験の勉強は、とにかく覚えることが多いため、2段階に分けて進めることがコツ。1週目は概要を理解するように努め、2周目から過去問などを解くようにしましょう。また、間違えた問題や難解ポイントなどをまとめ、情報を一元管理すると自分の弱みを克服しやすくなるのでおすすめです。
短答試験対策
短答試験対策には、過去問を繰り返し解くのがよいでしょう。過去に出題された問題と同じ論点が出題される傾向が強いためです。
論文試験対策
論文試験対策では、早めに論文の構成の仕方・解答のコツを理解することが重要です。論点を整理し、簡潔かつメリハリのある論証になるよう心がけましょう。また、論文構造が三段論法に基づいていることも大切なポイントです。
ただし、論文試験の答え合わせは、自分自身では客観的に判断することが困難なため、スクールなどの活用もおすすめします。
司法試験合格までの道は険しい
司法試験予備試験という新たなルートが登場したことで、経済的な理由などで法科大学院へ通えなかった方も司法試験を受験できるようになりました。多くの人々に法曹三者への道が開けたことは非常に喜ばしいことだといえるでしょう。しかし、依然として司法試験合格への道が険しいことに変わりはありません。
また、法科大学院へ通わず、法律の勉強を独学で進めることは非常に困難です。可能であれば、法律の専門家から効率よく学びたいところでしょう。
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