司法書士になるには資格が必要?仕事内容や合格後のキャリア、司法書士試験の難易度なども紹介
司法書士になるには資格が必要?仕事内容や合格後のキャリア、司法書士試験の難易度なども紹介
遺産相続や不動産などの登記といった手続きを行う司法書士は、常に一定のニーズがある職種といえるでしょう。相続手続や不動産・会社関係の登記など、仕事内容が多岐にわたるため、さまざまなシーンで活躍できる点が特徴です。
そのため、司法書士になりたいと考える方は多いのですが、具体的な仕事内容や必要な資格などの詳細を理解していないケースも多いと思います。そこで今回は司法書士を目指す方のために、司法書士になるための資格や仕事内容、合格後のキャリアなどを解説します。
司法書士の仕事内容や年収
司法書士がどのような職種なのか、仕事内容と年収を確認しておきましょう。
司法書士とは
司法書士とは、専門的な法律知識を活用して起業時に必要な会社の登記や不動産購入時の登記、裁判所へ提出する書類の作成、相続に関する手続きなどを行う、司法書士法に基づく国家資格です。一般人では実施が難しいさまざまな法的手続きを代行できる士業として、常に一定のニーズがある職種のひとつだといえます。
司法書士の仕事内容
司法書士の仕事は多岐にわたるため、代表的なものを紹介します。
相続、遺言などの手続き
遺産分割協議書の作成や相続登記の申請、遺言作成に関する相談、遺言書の検認申立、遺言執行者選任手続きの書類作成、戸籍の収集、相続関係説明図作成といった相続人調査、特別代理人や不在者の財産管理人選任、遺産分割調停の申立、相続放棄手続きなど、相続や遺言に関するさまざまな手続きは、司法書士の代表的な仕事です。少子高齢化社会の日本において、現在も増加傾向にある案件といえるでしょう。
成年後見制度
認知症や知的障害などの影響により判断能力が欠如した方の財産を保護し、サポートする支援者を選任する成年後見制度の手続きも司法書士の仕事のひとつです。こちらも少子高齢化社会の日本において、今後ますます増加することが予想される仕事だといえます。
不動産登記手続き
不動産購入時に、土地や建物などの登記簿に所有者を記載する不動産登記手続きも司法書士の仕事です。司法書士以外でも登記申請は可能ですが、書類が多く煩雑なため司法書士に依頼するケースが多くなっています。
企業法務業務
会社設立、本店移転、役員変更、解散といった商業登記の手続きや、企業経営で発生した法的トラブルの予防や処理対応、M&Aなどのサポートといった、企業内で発生するさまざまな法務業務への対応も司法書士の仕事です。
裁判および、債務整理業務
先ほど紹介した成年後見や民事調停利用の申立書、相続放棄、民事訴訟実施に必要な訴状、支払督促や強制執行書類といった、裁判で利用する各種書類の作成も司法書士のおもな仕事です。
また、借金問題を法的に解決するために国が認めている手続きである債務整理の手続きも司法書士の業務です。テレビCMなどでおなじみの過払い金請求の手続きなどを実施します。ただし、司法書士は裁判所を介する債務整理である個人再生(借金を1/5程度に圧縮し、残りを5年程度の分割払いで返済する債務整理)や自己破産(財産をほとんど失う代わりに借金をゼロにする債務整理)の手続きは実施できません。あくまでも書類作成業務に留まります。
なお、「簡易訴訟代理等能力認定考査」に合格した認定司法書士であれば、任意整理(貸金業者や金融機関と任意の交渉を行い借金の利息をカットして分割払いを認めてもらう債務整理)や不当利得返還請求などの代理人として業務遂行が可能です。
供託に関する業務
金銭や有価証券を供託所(法務局)に預け、該当者に分配する手続きである供託業務も、司法書士のおもな仕事です。
企業や個人事業主からの要請や裁判所からの勧告などによって、供託が活用されます。おもな供託は、以下の5種類です。
・弁済供託:弁済のために行う供託
・担保保証供託:担保のために行う供託(営業上の保証供託、税法上の担保供託)
・執行供託:強制執行のために行う供託
・保管供託:保管のために行う供託
・没取供託:没取目的物のための供託
参考:法務省/供託手続
司法書士の年収
日本司法書士会連合会の「司法書士実態調査」によると、司法書士の平均年収は680万円程度と試算できます。ただし、司法書士として独立した方の中には、年収が1,000万円以上というケースもあります。また、一般企業に勤務する司法書士の場合は年収が250~400万円になるなど、勤務形態によっても大きく異なる点に注意が必要です。
なお、司法書士の平均初任給は21万円程度だといわれています。年齢が上がるごとにスキルや経験が増え、年収も上がっていくことが一般的です。
司法書士になるためのステップ
司法書士になるためには、具体的にどのようなステップを踏む必要があるのか解説します。
司法書士試験に合格する
司法書士になるための最初のステップは、司法書士試験に合格することです。司法書士試験の詳細については後述しますが、決して簡単な試験ではないため相応の勉強量が必要になります。
司法書士会で研修を受ける
司法書士試験を無事に合格できた方は、司法書士会に登録して研修への参加が必要です。司法書士会は全国の至るところにあるため、自宅や職場から近いところを見つけて登録しましょう。
なお、研修内容や期間は司法書士会ごとに異なります。そのため、いくつかの司法書士会を訪問して、研修内容を比較検討すると安心です。
司法書士試験を受けない方法もある
司法書士試験を受けなくても、以下2つの条件をクリアすることで司法書士の資格を取得できます。
・裁判所や検察局で最低10年間以上の勤務経験があること
・法務大臣の認定を受けること
ただし、裁判所事務官や検察事務官などになることは、非常にハードルが高いです。さらに、法務大臣の認定を受ける必要があるため、この方法はあまり現実的とはいえません。そのため、司法書士になるためには、司法書士試験を受験することが一般的です。
司法書士の将来性
司法書士を目指す方であれば、
「司法書士になると、どんなキャリアが描けるの?」
「司法書士の仕事は今後もあるのか心配……」
などと不安になることもあると思います。司法試験合格後のキャリアと将来性を確認しておきましょう。
司法試験合格後のキャリア
司法書士試験合格後は、司法書士事務所に所属し、補助者としてキャリアをスタートするケースが一般的です。ただし、事務所によって「相続に強い」「債務整理が専門」「不動産関連の手続きがメイン」など、得意とする分野が異なります。そのため、将来的に自分がどのような仕事をしたいのかビジョンを明確に持ち、希望分野に強い司法書士事務所で働くようにしましょう。
また、司法書士試験の合格者の中には、最初から独立する方もいます。司法書士事務所でアルバイトやアシスタントとして働いた経験がある方であれば、いきなり司法書士事務所を開業することも選択肢のひとつです。しかし、まったく司法書士としての業務経験がない方では厳しいでしょう。
さらに、近年は簡易裁判所における訴額(請求額)が140万円までの民事訴訟案件に関する手続きが実施可能な認定司法書士としてキャリアアップする道もあります。法務省の認定試験に合格する必要はありますが、高年収を目指したい方にとっては、仕事の選択肢を増やす有効な手段です。
近年は、先が見えない世の中になったことで、社会構造がさまざまに変化し、多くの民事事件が発生する可能性も高まっています。また、少子高齢化の影響により、遺産相続や事業承継といった案件も増加傾向にあり、成年後見制度などを活用する機会も増えています。そのため、身近な法律の専門家である司法書士の需要が、ますます高まっている状況です。
司法書士試験の受験資格や内容・難易度
司法書士試験がどのようなものなのか、受験資格と試験内容、難易度を紹介します。
司法書士試験の受験資格
司法書士試験には特に受験条件がありません。年齢や性別、学歴は不問のため、誰にでも受験資格があります。また、受験回数も無制限のため、何度でもチャレンジできます。
そのため、2019年度の司法書士試験合格者は、最年少が20歳、最年長は72歳と、非常に幅広い年齢層になっている点が特徴です。
司法書士試験の内容
司法書士試験では、筆記試験と口述試験の2つの試験に合格する必要があります。
筆記試験は例年7月の第1、第2日曜日に実施されることが通例です。午前の部と午後の部に分かれており、それぞれ試験内容が異なります。
・午前の部:マークシート形式(憲法、民法、商法、刑法から35問)
・午後の部:択一式マークシート形式(不動産登記法や民事訴訟法など5項目から計35問)
記述式(不動産登記法書式および商業登記法書式から各1問)
一方、口述試験は筆記試験の合格者のみを対象とした試験で、例年10月に実施されます。
不動産登記法、商業登記法、司法書士法の3科目に関する口述形式の試験です。
司法書士試験の難易度
司法書士試験の合格率は、平均で3~4%程度だといわれています。法務省によると、令和2年の司法書士試験の合格率は、受験者数が11,494人に対し合格者は595人で約5%だそうです。司法書士になるためには、この狭き門をクリアしなくてはいけません。
司法書士試験は文系国家資格の中でも最難関のひとつであるため、合格に必要な勉強時間は3,000時間程度が目安です。1日に3時間勉強すると仮定した場合、1,000日必要になるため、2~3年間の勉強期間を想定しておく必要があります。
司法書士に向いている人
業務を正確にこなせる方と、前向きで責任感が強い方は司法書士に向いています。また、クライアントとのやり取りが多いため、高いコミュニケーション能力も必要です。
司法書士は法的な手続きが業務の中心になるため、細かい業務を正確にこなせる能力が欠かせません。自分が請け負った案件をミスなく遂行できる知識とスキルはもちろん、強い責任感がなければ務まらないでしょう。
働きながら司法書士を目指す人がほとんど
司法書士試験は誰にでも門戸が開かれていることから、働きながら司法書士を目指す方も少なくはありません。今後も安定した需要があり、司法書士としてのキャリアを着実に積むことで、年収アップも期待できる職種といえるでしょう。
しかし、司法書士試験に合格するための道は決して平坦ではありません。そのため、一念発起し集中して司法書士を目指すことも有効な方法です。新潟にある4年生の専門学校NLEEDの法律コースであれば、4年間集中して専門講師や現役司法書士の講義を受けられるため、司法書士試験の合格に近づけるでしょう。
また、入学時に必要なものは専門学校の入試だけですが、卒業時に「中央大学法学部(通信教育課程)」卒業の学位「学士(法学)」を取得できるチャンスがある点がメリットです。これから司法書士を目指す方は、ぜひNLEEDを選択肢のひとつとしてご検討ください。